すっかり梅雨らしい毎日が続いている。
小田原の仕事の締め切りが近づいているものの、未だに考えがまとまらない。こういうときがつらいときで、決断しきれないもやもやが梅雨空と重なる。
<リビング吹抜を見る>
先日、西白山台の住宅の上棟式が行われた。
請け負った工務店の社長と話をしていて、それなら正式な上棟式をやろうということになった。今回の棟梁は26歳。新進気鋭の若者ということもあって仕事に傾ける熱意が強い。若い大工たちにも見てもらって、今後の励みにもなればと前日から入った。
建て方は順調で、屋根の野地板も半分ぐらい張れたところか。
この瞬間に立ち会うのが、設計を書いた当人としては最も緊張するところで、果たして書いた高さに間違いはないか、各所のおさまりに不具合はないかと不安を募らせながら現場へと向かった。
でも見る限りは思ったように納まっていて、些か胸をなでおろした。
<幣を振る若き棟梁>
上棟式は宮司による神事のあと、工匠らによる上棟の儀に移る。
柱固めの儀、曳き綱の儀、槌打ちの儀と続き、最後に散餅の儀で締めくくる。棟梁の振幣に合わせ、大工たちの大きな掛け声のもと、晴れやかな儀式が続く。
若いお施主さんだが、互いのご両親もお見えになって、固唾をのんで見守っていただいた。儀式というものが次第に行われなくなってきて、淡々とした現場が多くある中、こうしたけじめに皆が集い、神事を通して心をひとつにすることも大事なことだと思う。
餅まきには多くの人が訪ねてくれ、ハレの日に華を添えていた。
年末の竣工に向け、これから工事は本格的に進んでいく。
まだ決めるべきことも多くあるが、この家ならではという住まいに結実するよう努めていきたい。
「長い年月を住まいながら、より良い家にしていきたい」と語った施主の挨拶に恥じぬように。
(前田)