すっかり更新が滞ってしまった。
昨年暮れの風邪から始まった体調不良が、ついに1月末から2月初旬にかけて寝込むこととなり、治ったと思ったらまた昨月末に風邪をこじらせてと、散々な今冬だった。
漸く春の気候に助けられて、今は毎日を慌ただしく過ごしている。
<西白山台の家 全景>
一昨日、長らくお待たせした「西白山台の家」の地鎮祭が行われた。最初にお話をいただいてから丸2年が経ち、さまざまな事情での延引とはいえ、さぞや待ちくたびれたことと思う。
まだ若い夫婦からの依頼で始まった計画だが、話を進めるうちに、かなり建築に詳しいことが伝わってきた。仕事は全く別のことをされているのだが、その探究心がすさまじい。ものの本質を突き詰めねばすまない性格なのだろう。会って話すひとこと一言を聞き逃すまいと、いつも真剣な打ち合わせが続けられた。
実施設計を挙げたのがちょうど一年前。先に図面をお送りして、後日説明に伺ったが、すでにその時には図面に赤でチェックを入れながら、設計意図を探ろうと懸命になっていた。
<手前が赤松の梁材、奥に並ぶのが柱の杉材>
自宅を作るのに、これほど真剣に取り組む人も少ないのではないか。
それは転じて、われわれ建築を作る側にとっても気が引き締まることで、襟を正して地鎮祭に臨ませていただいた。まだ寒風吹きすさぶ中だったが、祝詞をあげ始めると途端に陽射しが照りつけ、首を垂れる襟足に強い熱さを感じた。
その後、場所を移して材料を見てもらった。
私も初めて見るとあって楽しみにしていたが、思った以上の素晴らしい材料が揃った。梁や桁周りには赤松を、柱や造作材は杉をと思って図面にも書いたが、どれも上質の材ばかりが入っていた。
赤松も次第に産出量が減ってきて、近年いい材料の出会いが少なくなってきている。杉にしても、樹齢80年は過ぎないと芯去りで木取ることがでないため、素性のいい木が年々少なくなってきた。
それでも、今回の材料は目が通って節も少なく見事な木材といっていい。
<施主が作った構造模型>
材料を見た後、事務所で打ち合わせをと思っていたら、施主からサプライズがあるといわれ、見せられたのがこの建物の構造模型だった。実施設計を渡してから、この一年を掛けて丹念に図面を読み込み、部材の寸法に材料を削って自ら作った。見ればまさに図面通りの木組みである。
感嘆したと書けばあまりに簡単で、とても言葉にできない感激だった。
「図面を見ていたら、作らざるを得ない雰囲気になってきた」と。
それにつけても細かい材の納まりまで表現されているのには、ただただ驚いた。
これを見てこのまま帰るわけにはいかない。その場に居並ぶ全員で繰り出し、深更まで杯を重ねて語り合った。
これほどの施主とタッグを組める喜びと、ある意味での緊張感がこの現場を支配していくのだろう。
心から楽しみな仕事となった。
(前田)