山形の住宅の基本設計を上げ、福岡の計画に掛かりだした。昨年の計画に代わっての仕事だけに後へは引けない。相変わらず出張が難点で、夜ひとり、ホテルで図面を前に呻吟する日が多くなった。
各所の現場も本格的に動き出した。
<材料検査>
東京深川の寺院も昨年暮れから工事に掛かりだした。三聖山慧然寺という臨済宗の寺院で、庫裏の新築を含む境内整備全体の仕事を託された。
昨年6月にいきなり話が来て、来年春のご遠忌に間に合わせようという急ぎの仕事である。手探りで掛かりだしたが、檀家役員各位のご理解もあり、当初立てた予定通り、遅滞なく進行している。
工事業者を10月に決められたことで、木材調達が順調に行った。
秋から初冬に掛けてが樹木の伐採期間にあたるため、それに向けて急ぎ督励したのが幸いだった。
平成元年に竣工した本堂が見事な檜普請であることから、庫裏は少し格を落として、杉と赤松を中心にと図面を書いた。
青森の杉は秋田の流れを汲んで、赤身が桜色で美しい。芯去りにして柾目使いを取るには、少なくとも材径が2.5尺は必要で、そうすると樹齢80年以上でないと取れない。また昨今の松喰い虫はいまも北上中で、すでに盛岡手前まで来た。材寸の大きなものを求めたため、今回は東北の赤松をねらった。
役員会で工事金が確定してすぐに電話し、材料の手配に掛かった。
<樹齢120年の赤松>
幸い、明日伐るという山に大木の赤松があり、それを皮切りに、続々と大径木が集まってきた。これも出会いであり、人知では如何ともしがたい。運といえばそれまでだが、今回は何かに導かれたようにも感じている。
先日、住職を迎えて、材料検査を青森で行った。慧然寺はまた、鎌倉建長寺の管長さまの自坊とあって、ご住職のお声がけで老師自らもお越し頂き、検分にお立会い頂いた。
各所の梁や胴差の赤松、通し柱の杉柾角柱、幅2尺の式台に使う欅など、主要な見え掛かり材を中心に広げて揃え、説明に耳を傾けながら、みな熱心に見て回った。
<材料を説明する>
場所を移して、特注で焼く鬼瓦の図案もお見せし、了承を得た。
すでに墨付けが始まり、加工場も慌ただしく動き出した。来週には屋根の反りを決め、軒反り、破風板の原寸を書きに行かねばならない。
5月連休明けの建て方に向け、大工たちと一丸となって取り組んでいく。
(前田)
<鬼瓦の図案確認>