茅葺きの家<茅葺き>

桜の季節も過ぎ、若葉が一斉に芽吹きだした。
この4月の長雨には悩まされたが、漸く春爛漫の候となった。
田植えも始まり、山々の新緑も色鮮やかに、目を楽しませてくれる。

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                  <妻面の茅を葺く>
茅葺きに掛かりだしたが、この雨続きで仕事が捗らず、職人らも苛立ちが隠せない。今回の茅葺きでは琵琶湖の葭を使っているのたが、まだこれだけの葭があるのかと思うほど、一本一本が太くしっかりしている。
滋賀から来ている葺き職人たちは現場近くに泊まり込み、親方を筆頭に、年配から若者までの6人で望んでいる。葺き始めてひと月が過ぎたが、まだ半分ほどの葺き上がりで、やはりそう簡単に進むものではない。
重機も使わず、職人の手仕事だけで葺き上げていくさまは、本来の人の営みをまざまざと感じさせてくれる。

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               <垂木を打ち付けたところ>
建物の規模が大きいため、垂木には杉丸太を使った。京都北山から入れたが、思いの外いい材料で木肌が美しい。7mを2本継ぎとしてそれを放射状に配り、丸竹の木舞を1尺間隔に藁縄で縛っていく。
タルキは茅葺き職人と大工が一緒になってつけた。
先に、4mほどの長葭を木舞の上に並べ、見上げる小屋裏からの意匠を整えながら、順次軒先から葺き上げていく。葭は長さ2m、束ねた円周が2尺となるようひと括りとし、それを丸竹の木舞に藁縄で縛りながら留めていく。平の部分でおよそ2尺の厚みとし、ずらしながら葺く葭の束が、幾重にも重ねられていく。
このひと束を一足として、本建築ではおよそ7000足の葭を使って葺くという。

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         <左 長葭を配る、右 一足ごとに括り付ける>
仕事の合間に先日、職人らと杯を上げたが、それぞれ強者揃いで愉快だった。
昨日は親方を交え、私の意匠をもとに棟の納まりを固め、茅葺きももいよいよ後半に入った。
朝日を浴びて黄金色に輝く茅葺きを眺めながら、改めて人を取り巻く自然と、建築との関わりに思いを馳せた。

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               <田植えの風景と茅葺き>
  (前田)