玄関、取次を経て、縁廊下に出る。
この縁廊下から和室入側にかけて下屋が雁行して連なり、その上に本体屋根が2段になって葺き巡っていく。
縁廊下正面が、外から見た丸窓となる。
<縁廊下から庭を望む>
主屋の芝庭に面して、リビングダイニングを設けた。
空間を大きく、内部空間の充実を図るため、主屋の小屋には曲がりをもった丸太梁を縦横に組むことで、極力高さを確保している。
庭との融合が本計画の主眼であり、リビングは座した視点から庭がパノラマに広がるよう、立つ柱を出来るだけ少なくした。これを持たせるため、下屋の懐には構造用の桔木(はねぎ)を6尺ピッチで入れ、下屋筋に荷が掛かりにくいよう、本体に屋根を負担させている。
<リビングから主庭を望む>
ソファに座した視線が、自ずと庭に焦点を結ぶよう、天井は下屋に続く勾配天井とし、桜の板を流して張った。当初は他材を考えたのだが、思うような材と巡り会わず、ふと立ち寄った博多の材木商で見つけたこの桜を使うことにした。
初めて天井に使ったが、杢目が優しく、包み込むような柔らかさを感じさせてくれる。桜がこうした大材のままで使われることは少なく、狂いが多い木だけに、板で大きく見せる使い方は無理だといわれていた。
これは6分の厚曳きとして使ったのだが、通常の2.3分で曳いたら、すぐに竪反りを起こして使い物にならなかった。
その点、使い方の難しさが課題である。
またリビング背景の壁面は建具とし、格子に組んだものを入れた。3種類の太さの格子を両面に組んでもらったが、幅14尺あまりの大きさに、現場の納めでは苦労を掛けた。
<リビングからダイニングを見る>
ダイニングから中庭を見る。
ここから見る正面が花梨の木で、日本に入ってきた最古の樹だという。
樹齢400年を越える樹だけに、これを室内からどう見せるかも悩んだところで、特徴ある樹肌をクローズアップさせることで、存在を際立たせたいと思った。
雁行させながらも部屋を繋いだため、和室からでもその存在ははっきりとわかり、西庭のシンボルとして切り取ってみた。
ダイニングの天井は杉柾を市松に編んで張った。2.5寸の幅広を天井2分割で編み、現場で網代に繋いで張り上げている。市松の格子目には、和紙で裏打ちをした。
<ダイニングから中庭を見る>
夜は縁廊下との境に障子が立てられるよう、引き込みとしている。
天井の間接照明が和紙に拡散し、思ったより明るさが採れていた。
ソファやダイニングの家具も、いつもの村山組、村山千利の手に依った。材料選びから生地決めと短時間だったが、私の書くデザインの要点を理解してくれ、手際よく纏めてくれた。
<リビング、障子を閉めたところ>
(つづく)
(前田)