茅葺きの家2.

北口棟も役所検査を終え、竣工に向けて現場も大詰めに入った。
着々と壁が仕上がり建具も入ると、途端に空間が見違えてくる。
建築は、それだけ多くの職方に依って作られているということだろう。
7月9日にお披露目を迎えることとなった。

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                <山を背景にした外観>
今年初めに紹介した茅葺きの家だが、漸く基本設計が纏まってきた。
清流宮川に面した広大な敷地に、風光明媚なこの環境を、どう生かすかということが大きな課題だった。話を戴いて3年あまり、そのほとんどがこの課題を追求することに費やされたといっていい。
ただその中には、開発行為にかかわる区画やインフラ整備の要素も絡んでいて、景観的な美しさの追求と、関係諸機関から受ける法規的な制約との調整も含まれている。

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              <川の景色をパノラマで見る>
茅葺きの家を建てたい、というのがことの発端で、そのために相応しい土地を歩き求め、ここにたどり着くまで30年を要したという。茅は燃えやすい材料のため、建てたくても街中で建てることは許されない。それに加え、美しい景色をもった土地となれば、そう簡単に見つかるわけはない。
これまでの施主の苦労は、並大抵のものではなかったはずだ。
田圃が連なる中に茶畑が点在し、南を向いた正面に小高い山を見て、その山肌を撫で巡るように西から東へと川が流れていく。水音は耳に優しく、対岸の緑と周辺の山並みがコントラストを見せながら折り重なって消えていく。
アプローチから歩いてきた視線を、この景色にいかにぶつけ、どのようなアングルで切り取って見せられるか。およそ整理ができたところで試案を提出したところ、施主も気持ちよく納得してくれた。

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           <建物内部から対岸の山と川面を望む>
諸室の大きさと細部の調整が待たれるものの、秋口までには纏めていきたい。
というのも、茅の手配に一年掛かるため、そう流暢に構えてはいられない。
周辺の田園風景を取り込んで、大いなる自然の中に人の営みを表したい。
楽しみな建築となりそうだ。
  (前田)