灯りの試作

帯状疱疹が治らない。
患部は快復しつつあるのだが、痛みが一向に去らずに困っている。
四六時中とあって、ただでさえ衰えている集中力が全く働かない。
いつまでこの痛みは続くのだろうか。

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                <試作の行灯と反中さん>
行灯の試作ができたと聞いて見に行った。
千葉の現場が始まるので京都に北山丸太を選びに行っていたが、聞いたその足で高山に回った。高山は今が満開の桜で、車窓から見える臥龍桜もみごとに咲き誇っていた。
前に竹を編んだ火袋を紹介したが、もうひとつ、削り木で作る行灯も頼んでいた。
細い桟で組みたいと図面に落としたが、果たして技術的に可能かが心配だった。
作ってくれるのは村山組村山千利の右腕、反中政雄さんだ。
伺う前に電話をしたら、既に見通しがついたという。これまでデザインした灯りも、木のものはすべて反中さんの手に依っている。
これは、どちらかといえば雪洞のような暖かな膨らみに、細い桟がきりっとした柔らかさで引立つ姿を思い浮かべて書いた。火袋を六角として竹の2本脚で支える。六角は八角と異なり、見る角度で大きさが変わるため、安定性が崩れるところにその魅力があると思っている。
早速、図面をもとに試作をしてくれた。
出来た形はほぼ想像通りで、火袋の膨らみも申し分ない。竪桟を幾分細く、上下桟の木口を曲率に合わせるなどのディテールを固め、陶器で作る架台の柄や大きさ、内部の電灯位置も確認した。

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                     <行灯図面>
仕事一筋に生きる反中さんの姿には迫力があり、昨年大病をされて心配していたが、以前の元気を取り戻しつつあるようだ。前に工房を訪れたときは、仕事の都合で泊まることなく失礼したこともあって、今回は宿を戴いて夜を徹して呑んだ。
これまでの仕事の思い出に始まり、人との出会いや人生観まで、どれも心に沁みる話を伺った。特に仕事にあたって工夫する執念には凄まじいものがあり、けして出来ないといわない反中さんの職人魂には、いつも発憤興起させられる。
命がけの仕事の言葉は重く鋭い。
朝起きたら雪が降っていて、満開の桜に雪が積もる景色を初めて見た。
その誰もいない道を吉島邸まで歩き、囲炉裏端でお茶をごちそうになってきた。
和紙を中に貼るか外にするか、脚は削り木にした方がいいか、取手の材質は諸々、伊勢に戻る雪景色の飛騨路で再び思いを巡らしていた。
  (前田)