漸く千葉の実施設計が終わり、今日はこれから見積り合わせの現場説明に行く。
この間、プロジェクトの提案や構想の打ち合わせが続き、明日からは待たせていた住宅の計画に取り掛かる。
明後日からは東北周り、正月明けも束の間、慌ただしく追われている。
<四阿外観>
以前紹介した四阿(あずまや)が、昨年暮れに竣工した。
地域の茶道関係者が集って、市に寄贈された建物である。
早い段階から寄金を募っていたようで、ここに来て蓄えを形にしようと発案された。市の同意も得られ、市役所前の会館の敷地内に建てることが決まった。
茶道関係者との面識はないのだが、ひょんなことから設計を依頼され、趣旨に賛同して快く引き受けさせてもらった。
限られた寄金とあって、如何に寄贈者の満足を得られるかが課題だろう。そこから規模を割り出し、市側と建てる位置を交渉しながら詰めていった。
<四阿内部>
茶道を志す方であれば、やはり丸太を使った楚々とした佇まいをとは思うものの、資金面ではかなり厳しい。材料もそうだが、丸太を扱うと大工手間が相当に掛かってしまう。
ちょうど青森の料亭に掛かる時期と一致したこともあって、纏めて調達することで、材料コストを圧縮できたのは幸いだった。辻計銘木さんの好意にも助けられた。
また腰掛石は、石巻の森芳正博士から寄贈を受け、体裁を整えることができた。
改めて御礼を申し上げたい。
内部は立礼卓を持ち出して点茶ができるスペースを確保し、正面に松を望むよう客座を設え開口を取った。冬に入り庭が整えられなかったが、庭園の点景としても映り良くと考えた。
屋根は銅板で葺きたかったがコストが合わず、ガルバ鋼板を葺き足短く施工してもらった。寄棟に堅さが出るが、軒先も二段に葺いてくれ、それなりに表情が出たようだ。
市長の来駕を仰いで寄贈式も行われ、春には竣工茶会も開かれると聞いた。
有志の方にも喜ばれ、まずは責務を果たせたようだ。
<屋根裏見上げ>
とかく行政ものはぞんざいに扱われかねないが、志によるものだけに、その気持ちを汲んで座ってもらいたい。
小さな仕事だが、丸太の肌は柔らかく、ディテールは心の襞に似て繊細である。
多くの人に感じてもらえれば幸いである。
(前田)