梅雨明けした途端、刺すような日差しが連日照りつけている。
現場に出るときに比べ、暑さは机に向かう方がつらい。
先ほど、福岡の料亭も無事竣工を迎えた。
ホッとするのも束の間で、帰る早々溜まった仕事に日々追われている。
<府中I邸 外観>
東京府中市で、いま住宅を建てている。
木造2階建て、家族4人で暮らす家である。
私どものHPから尋ねてくれた人で、木が好きな30代の施主家族である。
最初にお目に掛かった折りも家族揃って出迎えてくれ、熱心に家づくりについて話を聞かれた。和気溢れる家族で、すぐにうち解けてしまった。自宅に招かれたのだが、その住まいも立派な木の家で、天井板も無垢を張った本格的なものだった。
木の家をと求める背景は、きっとこの家にあるのだろうと咄嗟に感じた。
それから一年あまりを基本設計に割き、昨年末に実施設計が完了。
その後、入札を経て工事業者を決め、3月初旬に工事契約、4月初旬に地鎮祭が行われた。実はこの間には曲折もあって、木の家の作り手が少ないことを改めて実感させられた。
5月の連休に集めた材料をみてもらい、すぐさま加工に入った。
いつもの赤松の梁も思うようにとれ、施主家族も喜んでくれた。柱の杉材も目が細かく、大黒のケヤキも充分な太さが手に入った。
加工中に2回、大工と打ち合わせをしたが、棟梁の熱心ぶりが伝わってくる。私の仕事では初めて棟梁を努めるが、今のところ人柄も仕事ぶりも好感を持っている。
<八角に削られた赤松の梁>
先日、現場で上棟式が行われた。
床を祭壇に見立て、棟梁以下、一同で仕事の無事と上棟を祝った。
天候にも助けられ、5日で棟まで組み上がった。
施主が式後に、直礼を用意してくれており、言葉に甘えて我らはじめ、大工みな呼ばれることとなった。それがあまりに立派な料亭で、出迎えの打ち水から露地の手入れに至るまで、心入れの行き届いたもてなしを受けた。料理の素晴らしさにも感銘を受けたが、何より施主がひとりひとりの大工に手酌して回り、流れる杯を返しながら挨拶を交わし、丁寧に頭を下げて回って行く。
これには、さすがに私も頭が下がった。
心を込めると簡単にいうなかれ、その裏でどれほど善計を積まねばならぬのか、彼の姿勢はきっと棟梁はじめ、皆の心に熱く響いたに違いない。
<上棟の様子>
話は逸れるが、私の場合、仕事を戴いて半年後に手離れするなどあり得ない。
基本設計に掛ける時間が、何より施主とのコミュニケーションと思っている。
効率悪いといわれるものの、これが互いにいい仕事を生む原動力だと思う。
その成果が形になるまでこれから半年あまり、ゆっくりと紹介していきたい。
(前田)