震災の余波で資材が滞り、各所の現場に影響が出ている。
この九州でも同様で、震災直後からさまざまな調達規制が入ったと聞いた。
そのため工程も遅れたが、日を追うに連れ、現場を覆う熱気も強くなってきた。
ただいま造作工事の真っ直中、徐々に形が現れだした。
<四畳半 掛け込み天井>
大工20人がそれぞれの部署を受け持ち、現場を努めている。
主だった座敷も柱が立ち、内法材、天井棹を終えたところから長押を付けだした。
大広間の長押、10mの材を取り付けるには、さぞや墨打つ手も震えたかと思いきや、大工が一枚上手で難なく形になっていた。さすがに大木から取っただけあって、木目が細かく揃って美しい。仕事の良さが、一層材を引き立てていた。
各所同じような進捗だが、四畳半は早くも天井まで張り終えた。平天井に掛け込みを添えたが、こちらも手際よく纏まった。
地元のテレビ局が、完成までを取材するという。当初4回ほどの撮影と聞いていたが、仕事を見て感じるところがあったのだろう、頻繁に現場に来ては撮影しているらしい。
丸太や銘木類については、地元福岡の九銘協、峯紀男社長に依った。当初はこちらが望む材料に戸惑いもあったが、常に誠意溢れる人柄で対応してくださった。限られた中ではあったが、私の目で選ばせてもらった。
峯社長は、前身の建物にも一部材料を納めたと聞き、これもご縁と合点した。
それでも、残月の間と四畳半の床框は揃わず、急遽福岡の帰りに京都まで探しに行ったこともあった。京都駅から車で一時間弱、仁和寺の脇を抜け周山街道を北に走ると北山丸太の産地、京北町に出る。このたびは京北銘協、辻実智之さんに案内してもらった。
3月半ばだったが雪が降りしきる中、あちこち無理をいって連れまわしてしまった。辻さんを含む2箇所から北山の入節を選び、档丸太も丹波档の格好のが入った。探しに行くも雪が本降りとなり、見る間に20㎝も積もったのには驚いた。この時期では珍しいという。
その後、現場で木作りも終え、思うような床框が取れた。
<京北町の雪景色>
写真では進捗が伝わりにくいが、見物としては今が面白い。
岩切所長の見識で、いい手の大工が揃い、互いに腕を競っているようだ。
屋根周りもほとんど完了し、左官が外壁の仕上げに掛かった。順調にいけば今月中には上階の足場がばれるだろう。
これから佳境を迎えるが、意識を集中し完成に導きたい。
(前田)