昨年末から寸暇なく働いているものの、一向に本業が捗らない。
飛び込みの依頼に後回しになるばかりで、しかも21日までの長い出張が重なったりと、どうにも仕方がない。これも自分の責任だけに、やるせなさが募る。
事情、推察願って、いまの途中経過を報告したい。
<福岡の料亭、材料を見る>
以前紹介した青森の料亭は、現在道路拡幅における役所折衝中で、暫し静観といったところ。先日女将と会ったが、今年の雪深さには参ったと嘆いていた。
1mを超える積雪で、日に三度の雪下ろし。見ておく必要があるが、自然の猛威には、人間など小さなものと実感する。
八戸に建つ川沿いの家、今は刻み加工の真最中で、この19日に上棟を迎える。
リビングに掛かる曲がり梁が、なかなか見つからなかった。先日ようやくと聞いて見に行って、間近に接し驚いた。図面を書いた本人が言っては済まぬが、自然の曲がり木も、これほど手に入らなくなった。
今では金にならないものは、山にも存在できなくなった。
山形K邸、既に完成間近で、正月明けに表門の図面を書いて送った。
小さな住宅だが、年を経たら、これ程の家に住みたいと思いながら書いた。
始めて共に住宅を造る大工だが、地元金山杉を使って纏めている。
盛岡には計画中の住宅があり、ほどなく纏まるところまで来た。
小欄で紹介した盛岡K邸の完成時に訪れてくれ、設計を託された。城下町の中心部に位置し、町屋特有の間口に、奥行きが長い敷地。
100年を越すモミジの庭もある。
いずれ紹介できると思うが、今は産みの苦しみといった状況か。
石巻は、この寒さで土中が凍ってしまい、とても植え込みができない。
池や流れも施工したいのだが、土が凍るとレベルが出ないため、先ずは寒さが和らぐのを見守るしかないようだ。立春も過ぎたので、この18,19日に伺うつもりだが、果たして昨日今日の雪で・・・と気を揉んでいる。
増築部分の建方も来週から始まるので、来月入ってが正念場だろう。
小田原では店舗の計画を進めているが、土地がらみで思案している。
数年前から伊勢を訪ねていただき、これまで静かに意見交換をしてきた。仕事になるまでは、こうした時間が必要で、私の場合、昨日作った建物を見て依頼してくる人は少ない方だろう。
月末から来月はじめには伺って、徐々に深度を深めようと思う。
伊勢は、おかげ横丁界隈の計画が継続しているのと、周辺地域からも声が掛かっている。中旬には新たな仕事の初会合があり、規模が大きいだけに身が引き締まる。これも、五十鈴河畔の建物を作った10年前から見ていてくれた人で、昨年春に話を頂いていた。
伊勢も2年後に遷宮を迎え、次第に活況を呈してきた。この地で頂いたご縁に感謝し、自分なりのご恩報じが出来ればと思っている。
福岡の料亭も着々と進行中である。
1昨日には、材料の第1便が入り、外回りから取付けに入る。続いて第2便が到着する月末からが本番で、20名の大工が揃って現場入りする。
それに先立ち、大工衆の顔合わせを行った。そのあと流れで皆と一献をともにし、朝方まで盃を重ねた。現場所長以下、心ひとつに纏まれば、必ず良い建築に結実する。呼吸を合わせることが肝要なのだ。
銘木関係は、地元で揃えることにした。
先日、棟梁と見に行き、選ぶ要点を伝えた。丸太は寸法だけではなく、姿や育ちを見る目も必要で、一概にこれといえない難しさがある。
先ずは、選別するその目を共有することに尽きる。これには暫し時間も必要だろう。
実はいま、新幹線で東京へ向かう車中で、これを書いている。
東京府中に建つ家の、金額決定のためで、業者を含めて三者で会うことになっている。先週、減額要素などで施主の理解は得ており、ほぼこれで決まるだろう。
いずれ紹介できると思うが、若い建主ながら木への理解が深い。準防火地域なのだが、木の家のぬくもりが感じられるよう、これまで設計を煮詰めてきた。
夢を実現する仕事に就けた喜びは、こうした人との出会いにもある。
それに加え、新たな計画もあって、常に気を張る状態が続いている。
廻るほどの頭は毛頭ないが、気を張ることは、万事に巡りがよくなるように思う。
ひとつの仕事に全てを出す、難しいことだが、いつも心がけていたい。
設計のデザインでも、出し尽くすと、後の仕事に障るという人がいるが、全てを放った後に残る微かな塵が、次第に発酵を重ね、次の仕事に繋がるような気がしている。
現状を吐露して、滞っている更新のお詫びとしたい。
(前田)