二軒茶屋についてー1.

二軒茶屋について、何件か問い合わせを頂いた。
具体的な主旨を述べてなかったので、改めてここで紹介したいと思う。
新五十鈴茶屋の着工年に竣工し、五十鈴川と向かい合って作った3作目となる。
大工を初め、各職方は地元の職人たちによった。
普請中はテレビ局が取材に訪れ、竣工までがドキュメンタリーに放映された。

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                <おはらい町の街並み>
―周辺の環境―
前回の遷宮におかげ横丁ができて以来、おはらい町は急速に成長を遂げた。
それまではどこにでもある雑多な街だったが、今では沿道の家屋がこぞって店を出すことで、新たな街並みに生まれ変わった。
その背景には、前回の遷宮を機に“伊勢おはらい町会議”が構成され、街並みと景観について地域を一貫して主導してきた役割がある。現代に新たな街並みを生み出した功績は大きい。
二軒茶屋は内宮とおかげ横丁の中間地点にあたり、おはらい町通りの東側に立地することで五十鈴川に接し、神宮の山々が望める。
ただ間口は狭く、奥行きが長い。
街道に面した典型的な区割りで、江戸後期の町割りから変わらない。
この辺りの敷地は五十鈴川より地盤が高く、川沿いには石垣を積んで出水に備えていた。従っておはらい町は、五十鈴川の水面から3mほど高い位置にある。
また伊勢には世古(せこ)と呼ばれる路地が細かく走っている。
建基法では道路幅員の確保から、建築を後退することを義務づけているが、伊勢ではこの路地を文化資産と捉え、世古道として指定することで地域に残す努力をしている。北側の路地がその世古にあたり、今でも周辺の人たちがこの道を行き交う。生活に密着した道は、今も豊かな表情を見せている。

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                   <おはらい町周辺>
―五十鈴河畔の散策―
近年、河畔を散策する人が次第に増えてきた。
その一端には市営駐車場が広く活用されてきたことと、幾つかの建築が河畔に向けて積極的に開いたことによる効果が挙げられよう。観光で訪れる人が多いところだけに、この場所に残る自然を実感してもらうことは、地域ならではの印象を高め、独自な魅力を刻むに違いない。
対岸には内宮を囲む山々が連なり、真正面には神馬休養所もあって、日中は神馬の姿も散見できる。これから上手は内宮の神域となり、緑深い森が広がる。
街と自然が結びついた格好の場所といっていい。対岸近くには烏帽子岩と呼ぶ岩場もあり、夏には子供たちがしぶきを上げて飛び込む姿が見られる。

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                   <二軒茶屋内部>
―設計にあたってー
内宮への参道として賑わうおはらい町通りに面して、二軒茶屋は計画された。
年間400万人が訪れる通りに対し、土地の持つ歴史を踏まえながらも、与えられた敷地ならではの空間を構築したい。
伊勢に代々続く和菓子の老舗が、このたび飲食を生業とする新たな店舗の開発にと計画が浮上した。観光に訪れる人が多い街にあって建築としてどのような提案ができるか、伊勢をどのように感じてもらえるか、この地に根付いた建築をと腐心しながら計画を練った。
(つづく)
  (前田)