二十年に一度の式年遷宮に向け、伊勢でもさまざまな試みが展開している。
その一環として、以前紹介した「地下おかげ参道」の上家工事が始まった。
年々訪れる人も増す神宮お膝元にあって、日本の聖地としての揺るぎない風格を備えてきた。遷宮まであと4年、活況にさらに拍車が掛かるだろう。
伊勢も他にならび、車を利用して訪れる人が多い。
浦田一帯に広がる市営駐車場も、単に車を停める機能から、次第に地域の玄関口としての新たな役割を担おうとしている。
一昨年、この駐車場に面して建てた五十鈴茶屋は、まさにその玄関口に相応しいあり方を模索したもので、訪れる人の期待が地域の役割を拡大させてきた。
この地下道は、市営駐車場から五十鈴茶屋を抜け、内宮参道のおはらい町通りとを結ぶ重要な動線となる。地下をひとつのフィルターに見立てることで、現代と伊勢とを繋ぐタイムトンネルになぞらえた「地下おかげ参道」として、陶板屏風の展示を常設した。
設置以来、多くの方から賛辞を頂いているが、地上の上家は旧態依然のままで、五十鈴茶屋に繋がる建築として周辺を牽引する景観づくりを模索していた。
折しも伊勢市では、景観法の趣旨に基づいた新たな景観まちづくりを進めようと、今年3月末に景観条例が施行されることとなった。
景観という社会性を確立する上で、一層の後ろ楯となるだろう。
その第一号として、地下道上家の景観整備が伊勢文化会議所によって行われることとなった。
実現にあたっては、行政当局の理解とともに伊勢在住の建築家、高橋 徹先生の奔走に依るところが大きい。先生は伊勢河崎のまちづくりをはじめ、おはらい町界隈、二見町周辺のまちづくりにも多大な貢献をされている。一環して都市の中における建築のあり方を提案し、地域が蓄えた文化に根差した建築を作られてきた。
伊勢に尽くされた功績は計り知れない。
この度、展示設計に続いて、この上家の設計を依頼された。
景観と建築のあり方に、一層の責務を痛感している。
今年11月には内宮宇治橋の渡り初めが行われるため、訪れる多くの人のもてなしにも、完成を急がねばならない。
すでに材料にも目を通し、大工にも細かな指示を与えた。
竣工時には改めて紹介しようと思う。
(前田)