石巻、森別邸の続きを。
月に2~3の頻度で現場に通っている。
始まったのが昨年の2月頃、早や1年以上通っていることになる。
さすがに広い庭だ、先日やっとのことで樹木の植込みにメドを立てた。
そこで計画にあたって書いたパースをもとに、各所を紹介したい。
<表門 白州>
敷地北西角には、前回この欄で紹介した表門を開ける。
正式な客はこの門から通されることになる。
寄棟の屋根を深く差し出す門に、鏡板の門扉が取り付く。正玄関としての格式を整えつつも、瀟洒な佇まいを伺わせたい。
表門の前面には周囲を塀で囲った8m四方の間を取り、迎賓空間に相応しい表構えを設えるとともに、敷地周囲を囲む石垣も、門右手を矩折れに回し、門内に消していく。
威厳と風格の中にも、優しさ漂う懐深い空間を目指した。
<紅葉山のアプローチ>
門を潜ると一面の白洲に迎えられる。
正面は石垣上に垣根を連ねて、向こうに広がる主庭との結界とし、それを左手に見るよう右に大きく曲がると、緩やかに昇るアプローチが続く。
歩く苑路には右手から覆い被さるように、大小の紅葉が幾重にか重なり、苔に彩られた柔らかな起伏が、アプローチを軽やかに演出する。
これが本庭園のプロローグとなる。
<数寄屋門を望む>
建物は敷地の東南部分に位置している。(前回の全体計画図参照)
広間の茶室を主体とし、日常使われる部屋などをまとめた迎賓施設の核となる建物である。表門を迎え入れの正面と位置づけてはいるが、直に建物へ導入する動線も必要かと、数寄屋門として近くに開けることとした。
軽やかな切妻の軒を深く出した門に、引き分けの格子戸を入れる。
表門とは一転した穏やかな佇まいで、門に接続して袖塀が取り付く。
敷地南西部分を囲む石垣は数寄屋門左手で終わり、かわって板塀が建物周囲を囲む。この一帯が茶の湯の展開へと続く、数寄の空間となる。
格子戸正面には、植裁を透かした苑池が望まれ、対岸には四阿が散見される。
左の緩やかな石段を上っていくと、池を中心とする回遊苑路へとつながり、延段を右に折れると建物玄関へと結ばれる。
表門界隈とは異なり、植裁も穏やかな樹木で構成されていく。
<数寄屋門から苑池庭を望む>
数寄屋門から続く塀を右手に進むと、玄関へのアプローチとなる。
路面には氷紋目地の大前な延段を打ち、塀内の意匠には杉皮を張って一層の穏やかさを強調する。ここに至って庭木も次第に優しくなり、数寄の空間へ向かう設いが整えられる。
建物側には細割の栗材に、チョンナでなぐり目をつけて詰め打ちした塀を立てる。外部空間における塀は、部屋における内壁の役割を果たし、密度を持った装いは外部であっても空間を引き締めてくれる。これは床面も同様で、先の延段の意匠も、空間にとって重要な要素となる。
全体を端正に仕立てることで、緊張感みなぎらせたアプローチにしたい。
延段の先は飛石に続き、広間を回遊するように茶室へと向かう苑路が作られる。
<延段のアプローチ>
広い庭にも強弱をつけながら奥深さを演出し、スケールが拡散しないよう注意を払う。庭においても人間のスケールを逸脱しない造形を心掛け、繊細にまとめることで限られた空間に、さまざまなシーンを展開したい。
表門、数寄屋門などは庭園に沿った建築であり、広間の建物も同様である。
これら庭園建築とともに、茶室への展開は次回に譲る。
(前田)