四季の室礼<春>

少し間が空いてしまいました。
すっかり秋になって朝晩は肌寒くなってきました。
こうして季節が移り変わって行くんですね。
四季の暮らしと室礼、今回は春です。
それでは、どうぞ。
 ~ 四季の暮らしと室礼<春> ~

画像

節分ですね。皆さんはお分かりでしょうが、何だか分からない人も若い人には多いようです。
こうした行事が身近に消えつつある、何よりの証拠かも知れません。
節分が終わりますといよいよ立春。春の到来ですね。

画像

立秋が過ぎるとお雛さま、上巳の節句です。
女の子があるお家では雛壇を設けて雛人形を飾り、桃の花などを添えます。
私たちが子供の頃は、こんな立派な雛人形を飾ってある家などありませんでしたが、今はおじいちゃんおばあちゃんからの贈り物で、結構立派な雛が飾ってあるお家が多くなったと聞きました。
右側はちょうどこの頃に掛けられた、床の間の軸です。
「百花春に至って誰が為に香る」という句です。
先ほども申しましたが床に掛けられた軸は、単なる飾りではありません。
この句の中に春の薫りを感じ、書いた人を想う。
極めて知的なイマジネーションを伴い、人それぞれの春の想像を駆り立てるのです。
この軸は京都大徳寺の塔頭、三玄院の開祖、春屋宗園という方が書かれました。
千利休と親密な交流があり、秀吉を初め、時の権力者とも渡り合った、当時大きな影響力を持った禅僧でした。その方が書かれた百花云々の文字に、何を見るのか。
それが軸の観賞の面白いところです。

画像

雛祭りが終わったと思えば、あっという間に端午の節句。
菖蒲を活け、5月人形を飾るお家もあるでしょう。上巳の節句を女子の節句としたことから、5月5日の端午の節句を男子の節句としたそうです。
粽や柏餅を頬張る想い出は、どなたも持たれていると思います。
またお庭が広ければ、鯉のぼりや旗などを立てて子供の成長を祝う家もあるでしょう。
今では子供の日として休日になりましたが、これは第2次大戦以降のことらしいです。

画像

もうひとつ、軸の面白さを紹介します。
これは「青山緑水(せいざんりょくすい)」と読み、新緑が山に染まる季節を詠んだ句です。
ただここでは、上の字と下の字が書いた人が違います。
寄せ書きにしているんですね。上の字(青山)が大徳寺の官長さん、下の字(緑水)は千家の宗匠が書かれています。ご存じのように、大徳寺は利休のお墓があるところですし、千家とは切っても切れない関係が今なお続いています。またこうした寄せ書きを観ていると、このお二人の間にはそれを超えた親交があるのでは、とも想像しますね。
文字のうまさだけが書の観賞ではないところに、日本人の感性豊かな部分が感じられます。
実際の講義では、たくさんのスライドで話をされていましたが、繋がりある事柄が多く文章にはなりづらいところもあって、少し割愛させていただきました。
行事を積極的に採り入れる楽しさが、こうした室礼を生むんでしょうね。
次回はー四季の室礼<夏>ーです。
  (かりの)