暑い日が続きます。 皆さま如何お過ごしでしょうか。
さて、祇園祭に飾られたハレの日の室礼についての続きです。
少々間が空いてしまいすみません。
前回書きましたように、300年来のお家柄の河村家。祇園祭神幸祭で巡行する、中御座御輿が立ち寄るお家でもあります。
またこの日は、河村家の晴れの一日でもあるのです。
当日わたしが伺った時、まさに若当主ご兄弟が飾り付けの最中でした。
町家の建物の下屋に水引暖簾を掛け、その垂れ具合などを何度も調節していました。
以前からお店には何度か伺っておりますが、当日は店に入ってびっくり。
日常の貝葉書院さんの姿は、もうそこにはありません。店と玄関寄付には緋毛氈が敷かれ、蔵から出された屏風が飾られ煙草盆が添えられています。まさに祇園祭のハレの日の室礼になっていました。
忙しそうに立ち働くお姿に、あまり詳しく聴くことは出来ませんでしたがこの屏風、狩野派の作品だそうです。通年、湿度が調整されている蔵があるからこそ、永い年月を経てもこの輝きを保っていられるのでしょう。
河村家でもその蔵は家の奥にあり、昔ながらの漆喰で塗り込められた建物となっています。
これら”家宝”を守り伝える、家としての誇りがその佇まいに現れているようです。
さて御神輿が河村家に”なかだち”に来られるのが、午後6時半くらいのこと。
その時にお稚児さんと宮司さまが河村家のお座敷に上がられ、休憩されます。
当然その座敷にも、祇園祭の室礼がされておりました。
掛軸は祇園祭の主神、「八坂皇大神」。八坂神社宮司さまの宸筆です。
軸の横に活けられている花を、桧扇(ひおうぎ)といいます。
これは祇園さんのお花で、祇園祭の時は必ずこの花を活けるそうです。
その頃台所では大忙し。”なかだち”にこられる神輿の担ぎ手方へ出すお茶を作ったり、お手伝いに来られる方への簡単なお料理や、箸休めを拵えたりと大わらわです。
河村家にはこの日のために、お寺の法事で見るような大きなやかんが20近くも保管されているとのこと。とても普通のお家ではできませんよね。
そうこうしている間にも、担ぎ手方へ配られる弁当が運び込まれ、一層活況を呈してきました。
こんな感じで(笑) しかもその数なんと1000個近く。
お母様はこれを近所の方へ配られたり(私たちは失礼ながら先にいただいたのですが)と、全く休む間もなく働きずくめのご様子。この裏方の存在あってのお祭りなんですよね。
そのお弁当がこれです。
この弁当は一から十まで、全て男手だけで作られるのだそうです。
作った弁当は、八坂神社でお浄めをしてもらいます。
いち度に沢山炊かれるからでしょうか、そのご飯のなんとも甘くておいしいこと。
添えられた梅干しも、漬物もとてもおいしかったです。
竹の皮やお弁当を結ぶ藁は、近年不足がちで、祭の随分前から準備しておくのだと聞きました。
この日のために、相当な人の手が関わっているんですね。
お祭りは神事ではありますが、それを行う人たちの団結がその意図にあるんだろうと思います。携わる皆が、気持をひとつにして精一杯尽くす中に、祭本来の意義があるんでしょうね。
室礼もその一貫であって、ただ飾った空間を見るのが室礼ではなく、そこで行われる全てが室礼なんだと強く感じました。特にこの河村家のハレの日で、その姿を垣間見ることができたようです。
次回は、いよいよクライマックス。
お稚児さんご来駕です。
(かりの)