和室から20畳のリビングへと繋がる。
上階まで大きく差し掛けられた吹抜に、登り梁の存在感が空間を彩る。
2間半に掛かる登り梁は、丸太を曲がりなりに八角に落として使う。
もつ強度を損なわずに、造形に反映させるためである。
今に始まったことではないが、こうした木づくりひとつに日本の造形がある。
丸太のままの梁と比べ、どれほど空間に与える影響が大きいことか。
自然の素材は、手を掛けることで人に近いものとなる。
自然のままが一番というのは幻想で、その自然が”生”ででると、空間として馴染みにくい。手を掛け、馴らす中で、次第に人に寄り添うものとなる。
これも大工仕事のひとつの側面である。
手懐ける努力が、自然を扱う上では欠かせぬ大切な仕事だと思う。
リビングに向かってキッチンが対面する。
奥さまがこだわったところだ。計画当初は矩折れのキッチンを希望されたが、予算の都合でフラットになった。しかし、それでも意を得なかったのだろう。
思案の末、背後の壁面にレンジを組み込み、2列使いの形に固まった。
北壁に面してレンジを、流しがカウンター越しにリビングと対面する。
天井が吹抜ける中、手元明かりの確保が悩みどころだったが、カウンターにショーケースライトを立てて解消した。意匠にもひと役買ったようだ。
和室とリビングの間は引き込み戸を入れ、開け放たれる。
リビング南庭に面する二つの窓も同様である。
障子、ガラス戸、網戸、雨戸が収納され、時々によって引き出され、開放される。
全て開け放てば差し出されたデッキが南庭へと繋がり、庭が室内に流れ込む。
このようなLDKの間取りは、今やあたりまえになったが、食事の場とくつろぐ場を、同じ室内で接続させるのはそう簡単ではない。
ダイニングは食事のため、リビングはくつろぐためと、その違いを知りながらも、何ら工夫なくソファーとダイニングテーブルが並べられていると愕然とする。
存外、空間として成り立っているものは少ないのではないだろうか。
同じ室内でも、機能に沿った空間の配慮がないと落ち着かないものである。
ここでは、リビングと直行する形にダイニングを接続した。
キッチンとは密接に繋がるが、リビングとは空間を異にし、互いの目線が交わらない配慮をしている。このダイニングで四畳半強。
天井を思い切って下げ、そのかわり大きく窓を取り、庭と繋げる。窓とテーブルの高さを合わせ、座る視線の先に、別空間の庭が展開する。
こうすることでダイニング独自の空間が演出され、家族の食卓が生まれる。
窓を天井まで開けたことで空が取り込まれ、朝日が燦々と注ぐ。
周囲の視線に備え窓外に簾を回したが、これも雰囲気をもり立てているようだ。
食器棚には、民家を好む奥さまに応え、水屋箪笥を造り付けた。
リビングからは、2階子供室への階段がかかる。
そのためリビングの上方隅に抜けが生まれ、一層の広がりを感じさせる。
南に開けたスリットの光は刻々と変化し、リビングの空間を生動させている。
(前田)