神奈川県鎌倉市
鎌倉駅からほど近い住宅地の一角に、若い5人家族の家を依頼された。
敷地は山裾を上がるような坂道が南に取り付き、住宅が建つすぐ裏手に小高い山が迫り、その頂き近くまでが敷地に含まれる。また敷地は南に向けて扇を開いたような形状になっていて、それらをどう生かすかが課題だった。
要望に、家族で一緒にいられる空間を大切にしたいとあった。そのため、1階をパブリックな空間に限定し、2階をプライベート空間として、各寝室やユーティリティを集約させ、それぞれの空間の充実を図った。敷地自体は十分な大きさだが、南に向けて広がる土地形状を生かし、ダイニングキッチンを敷地なりに斜行させて配置することとした。
駐車スペースの脇を通り、アプローチを雁行させて玄関へと導く。奥まって玄関を設けることで、道路からの視線を避けつつも、地窓を設けて夜の帰宅時には玄関の灯りがこぼれる。
ホールを抜けるとLDKが広がる。2階までを吹き抜いた大きな空間で、南面の陽光を大きく受け止める。また2階へとつなぐ階段を象徴的に見せることで、キッチンとの緩やかな分離も試みた。
1階をパブリック空間に限ることで、南の庭が広く確保でき、リビングに居ながらにして、周囲の環境と一体になれる爽快さは格別である。またリビングからは、裏山に通じる北側にも大きくテラスを張り出し、南北の両方を外部に接させ、内外が交錯する空間の醍醐味を提供できたようだ。
設計時から、家族が共に集まると同時に、各々が好きな場所で過ごせるような居場所を作りたいと聞いた。大きな吹抜を介して家中が繋がり、どこにいても家族の存在が、居ながらにして伝わることが、その趣旨であった。
外部には、外付けブラインドを取り付け、室内環境の貢献に一役担わせている。