青森県 三八群五戸町
JR八戸駅から車で20分ほどの距離にあって、周辺を田園に囲まれた一画に建つ。兼ねてから念願だった、夫妻の終の棲家となる土地を見付けることから始めただけに、随分と時間が掛かった。
敷地は東西に長く、周辺に隣家が密接していないこともあって、伸び伸びと計画が出来た。池と流れが欲しいということから計画が始まり、庭園と一体になった住まいを望まれていた。
土地が400坪少々、東西に長く、南に道路が取り付く。幹線道路から離れているため、車の音に悩むことはない。南の先には小高い丘陵が連なって見え、これを借景に取り込みながら、ゆったりした時間の流れが家全体を包むような空間にしたいと思った。
数寄屋の醸す品の良さと、いつも手がける骨太の木組みを混在させ、美しさと力強さが噛み合うような建築を志した。
建物は、全体を平屋建てとして周囲に塀を巡らし、表門を開ける。
東北の地ということもあり、冬の厳しさに耐えねばならないとあって、些か無骨な門としたが、屋根は大きく起りをつけた一文字葺きの瓦屋根とし、その中にも穏やかな佇まいをねらった。
表門を入ると中門が立ち、ここで客は亭主に出迎えられる。中門からは庭の最も深いところまでが見通せ、石畳のアプローチをわたり玄関へと向かう。玄関は欅の式台に化粧屋根裏とし、正面に床を構える。取次を経て入側を巡ると、庭の景色が一気に開放される。和室は8畳、客座からは濡縁越しに庭が一望される。茶の湯をたしなむ奥さまとあって、本勝手に炉を切り、水屋を備える。
リビングダイニングは30畳ほどの広さで、アイランドキッチンとした。梁組みの架構は赤松と欅を混ぜ組み、床は赤松の色を揃えて張った。池の眺めと、塀越しに広がる丘陵の風景は、この場所ならではの借景となった。