青森県 八戸市
八戸市郊外の新興住宅地に立つ。施主はまだ若い夫婦で、私が建てた家を見て依頼を頂いた。やはり木の家を熱望されており、随分と他所を回って見たらしいが、特に近在から取れる赤松の表情を見初め、これを使って我が家を建てたいと熱く語られたのを覚えている。
建てた当時はまだ周辺の開発も進んでおらず閑散としていたが、近年、大型店舗の出店などもあって立派な住宅地となった。敷地は新井田川に添った格好の土地であり、ここから見えるであろう景色を見込んで施主が求めたと聞いた。
川沿いに道路が走り、それが堤防を兼ねていることもあって、1階からの視線では川面は見えない。そこで2階をリビングとして、ソファーに座った目線から川面が望めるようにと計画することとした。
玄関とともに、2階は多くの来客の折り、みんなが集えるようにと土間を大きく取って庭へと繋げた。庭との境は全開放サッシとして大きく開き、またこの土間と接して和室を設けることで、さまざまな使い方が可能なようにと考えている。
2階からの眺めが最も期待されるところで、建物配置には気を使った。慎重に高さを割り出して、座った折りの視線を考慮しながら、川との距離と階高を決めた。出来てみると思った通りで、川向こうの自生の林越しに遠方の山々が眺められる。切妻の屋根裏を化粧で見せ、架構を構成する梁に赤松をふんだんに使った。軒を6尺だして直射日を抑え、軒先のラインで風景を切り取る。ダイニングキッチンもリビングに接して、どこからも邪魔されない風景を生活に取り込んだ。
天井には杉の羽目板を一面に張ったが、これを眺めるのが気持ちいいという奥さまの言葉が印象に残った。