宮城県 石巻市
石巻駅から車で10分ほどの場所にある、閑静な住宅街の一画にある。
施主は地元の開業医で、信頼が厚い。このほど、日本文化の粋を集めた 別邸を構想され、気持ちある人には開放しながら、石巻文化の発展に貢献 したいとの想いから発案された。
敷地が約1000坪あり、そこに日本庭園と茶室、主屋棟を計画した。実は、私がかかわる以前に既に着手しており、庭園のある部分はかなり具体的な形になっていた。ただ全体を通しての構想が未完成で、それに不安を覚えた施主から依頼されたのがきっかけだった。
掛かった工事を止め、全体構想を練ることから始まった。池の位置や苑路の経路、賓客を迎える表門や、建物を使うための出入口など、改めて線を引き直し、具体的な図面に落とし込んでいった。幸い建築業者は以前からの知己が担当しており、気心が知れていたのは幸いだった。また庭師はまだ若人だが気持ちの良い職人で、すぐに肝胆相照らし、現場と距離なく話ができたことが、全体の雰囲気に表れたのではと思っている。
門前を広く取り、賓客の車寄せとして表門を開ける、そこから白砂の苑路をわたって庭へと導かれる。石組みの滝口から流れを連ね、池へと注ぐ。池の周囲に苑路を巡らせ柔らかく納めた。傍らには腰掛を設けて点景とし、建物へといざなう。茶室は秋田の老舗旅館から譲り受けたもので、裏千家家元の扁額がかかる。主屋は広間の茶が出来るよう2室を続け、住居部分の座敷は池に面して配置している。
工期の少ない中、施主も一緒に植裁や重機の手配にかかわった。そうしたこともあり、全ての職人が一体となって工事に集中できたようだ。
震災の津波はここも襲ったが、かかわった職人が皆で復旧し、現在も多くの人が訪れている。