歳末にあたって

今年も残すところわずかとなった。
まだ仕事は残っているものの、何かと慌ただしさばかりが募って手につかない。
賀状も手がつかず、書かねばならないことも手つかずだ。それでもクリスマスともなると、今年も終わるんだという実感に包まれて、何となくホッとする。
あるところで6年越しに掛かっていた計画も、ようやく目途がついた。建築計画としての大変さよりも、ソフトの構築にメンバーの意見を集約させるのに時間がかかった。当然のことではあるが、将来のことを見据え、お互い意見を出し合い決めていく。誰も先のことなど分からないのに、それでも今を基準に進まねば答えにたどり着けるものではない。
町とか、建築とか、それに関わる人について、多くのことを語り合ってきた。いい勉強の機会を戴いたと感謝している。
このまま現実として受け入れてもらえるかは未定だが、やり切れたとは思っている。
福岡の美術商の造作が進んでいて、特注で作る椅子の大まかな木組みができた。
「王様の椅子」と呼んでいるが、ゆったりと大仰に腰かけてもらいたいとの要望から、このような形になった。椅子の職人も激減しているようで、この椅子を作ってもらうのも、かなり探し回ってもらった。
職人不足は建築全般にいえることだが、この先どうなるのか不安が拭えない。
モノを作り出す喜びは、何ものにも代えがたい崇高なものだと思うが、技術の習得までにはそれなりの年月が掛かるのも事実である。若い頃の辛抱があってこそ、確かな技術をモノにでき、それが生涯にわたって身を助けてくれるものとなるのだが、辛抱できない人が多くなったということだろうか。
14149.jpg
明日明後日と、京都での打ち合わせで、今年の出張仕舞いとなる。
漸くコロナ前に戻りつつあるようで、早く社会が元に戻ってくれることを望む。
本年も色々とありがとうございました。
来る年も、微力を尽くしていい建築を作ることのできるよう、精進を重ねていきたい。
  (前田)