新生餘慶庵<竣工1.>

HPでも紹介したが、餘慶庵の改修が竣工した。
工期が短く、当初はかかわる皆が無理ではないかといっていたが、何とか多くの人の協力を得て、無事に竣工にこぎつけた。このような場所での仕事に、職人にとっても心に残る仕事となったことだろう。

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                <餘慶庵扁額を見る>
京都の北、閑静な寺域が広がる大徳寺。
ここは千利休ゆかりの寺院でもあり、今も多くの人が訪れる。その塔頭のひとつに瑞峰院がある。瑞峰院はキリシタン大名として知られる大友宗麟公の菩提寺であり、宗麟公が帰依した徹岫宗九和尚を開山として、480年ほどの歴史がある。
現在の庭は開山徹岫宗九和尚の400年遠忌に際し、重森三玲氏の手によって作庭された。
その境内に建つのが餘慶庵で、昭和2年に建てられた。中外日報の創始者の建立になり、その後、瑞峰院の茶室として使われてきた。大徳寺は利休の月命日に全山で釜が掛けられるが、その折りにはこの茶室が使われ、多くの人が参会する。
近年、建物の老朽化が進み、至るところに支障が見られるようになったため、大規模な改修の依頼を受けた。

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              <瑞峰院本堂前の独座庭>
増築に継ぐ増築で、屋根形状が不適当な箇所も多くあり、材の耐力が限界に来ている箇所も見られた。そのため屋根を全て取って新設するとともに、使い勝手上の空間を整えて纏めた。
旧材を極力用いながらも、向こう50年は修理をしないですむようにとの要請を受け、小屋材も大断面の木材で再度組み直している。古く味が出てきた壁は極力補修程度として残し、構造的に堅固にするよう、見えない箇所で補強を施している。
全体の佇まいは旧来の姿に近づけながらも、本堂からの入口回りは、既存の腰掛けを再用しながら造形を纏めた。全体に新しくなりすぎないよう細心の注意を払い、細部に至るまで自然な佇まいが訪れる人に伝わるようにと心掛けた。

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               <本堂裏手の閑眠庭>
瑞峰院の大和尚には若い頃からさまざまな薫陶を受け、言葉にできないほどの恩義を受けた。
少しでもこのご恩に報いられればと思って望んだ仕事だった。
(つづく)
  (前田)