慧然寺境内整備<竣工1.>

今年は異常に早く梅雨が明けてしまい、毎日の暑さに閉口している。
昨月中に仕上げる小田原の実施設計も、漸く書き切れることができた。
溜まった雑用をこなし、また新たな計画に取り掛かろうと思う。

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              <前面道路より全体を望む>
今年の3月末に、東京深川の慧然寺(えねんじ)が竣工した。
4月に行われた、開山別傳和尚の350年遠忌が、この計画を進める事由だったが、私が頼まれるまでには随分紆余曲折があったらしい。それでも何とか遠忌法要に間に合うことが出来たことは、施主の宗嶽和尚はじめ、檀家衆一同への、ささやかなご恩返しにもなれたのではと、些か胸をなで下ろしている。
臨済宗円覚寺派、三聖山慧然寺という。
かつては清澄通りまでの広大な寺域を誇っていたが、関東震災後に民家に開放するよう命じられ、現在の寺域に縮小された。近くには深川不動や富岡八幡宮があり、周辺にも数々の寺院が点在する。このあたりが昔日の木場で、戦後暫くはまだ材木商が軒を連ね、辺り一面に材木が立てかけられた風情が見られたという。

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                  <山門より望む>
依頼されたのが、一昨年の5月末。
それから急ぎ要望を聞いて実施設計を纏め、9月初旬に現場説明、10月末には工事契約と、待ったなしで進めてきた。さすがにこの初動で遅れがあっては、確実に遠忌は迎えられないとあって、一同必死な形相で図面を纏めていた頃が懐かしく想い出される。
工事中も、地下の水に悩まされたり、最後になって雨が重なり、検査が延び延びになったりと憂鬱が絶えなかったが、出来上がった建築を見て、多くの人に喜んでもらえたことが何よりの報酬だった。

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              <境内から本堂、庫裏を見る>
境内整備は、墓地の修復、庫裏・書院の新築、本堂の改修、外構を含む一帯の整備、駐車場と倉庫棟の新築と、寺域全てにわたる計画となった。
何も分からず飛び込んだ仕事だったが、和尚さまの格別の采配で、尽力してくださる多くの方のご縁を頂いて纏められたのは幸いだった。
前住が鎌倉建長寺の管長さまということもあり、工事中はことあるごとに慰労に来てくださり、酒食をともにしながらさまざまな啓発を戴けたことも、素晴らしい思い出となった。
次回から、整備工事全体を通して詳述していこうと思う。
  (前田)