新生餘慶庵

正月明け以来、20日も出張が続いている。
何をしているのか自分でもわからない。
瞬く間に過ぎてしまった、というのがこの月の印象である。

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            <瑞峰院表門より>
昨年、京都大徳寺の瑞峰院より、茶室の屋根替え、増築における設計の依頼を受けた。
まだ修理して間もないはずだがと思っていたが、軒が下がり雨漏れもひどくなっている。そもそもこれまで度重なる増築を繰り返してきた建物だけに、不自然な屋根の取り付きが多いのが最たる要因である。
これを機に、向こう50年修理しないですむような改修をと依頼された。

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       <餘慶庵現場にて関係者顔合わせ>
餘慶庵(よけいあん)は築100年弱の建物で、中外日報の創始者が住まわれたゆかりの建物であり、近年は茶会などで頻繁に使われていた。今回の改修も、来年に行われるとある襲名茶会で使われることから、それに合わせて一新したいとのお寺の意向による。
改めて解体しながら建物を見ると、柱は細く華奢にできているが小屋はしっかりと組まれている。軒の小丸太は細すぎて既に耐力の限界、また屋根勾配がぬるいため、はね木を入れらないことが軒を下げる原因と思われた。壁は問題ないが、腰掛のあたりはすでに土に還っており、全体を見直すには格好の時期だったのかもしれない。

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              <同 上>
私が京都にきた27年前、ひとりスケッチブックを片手に方々を見て回っていた。食べられない時期で、その分、ハングリーな目で京都をむさぼっていた。
そんな時に声をかけてくれたのが、ここ瑞峰院の老師だった。お茶に触れさせてくれ、幾たびも突っかかるように言葉を投げかけては深更に及んだ。
訪ねては酒食をごちそうになり、泊まって朝から読経に掃除をしては、ここから仕事場に向かった。とても言葉にならないほどの御恩をいただいた。そんな場所で、このような仕事をさせていただける喜びはない。

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          <関係者一同顔合わせ>
現在、基礎が終わり材料の加工に取り掛かっている。来月入ると大工が乗り込み、下旬前には上棟を迎える段取りである。多くの目に触れる仕事であり、さまざまな方に使っていただく建築だけに、しっかりした仕事で応えていきたい。
進捗はまた追って紹介したい。
  (前田)