南部の家<竣工3>

今秋は雨が続き、鉛筆が載らない日が多い。
忙しいときに限ってそうで、いらいらが募る。
少し落ち着くかと思った仕事も、何かと引っ張り出され、気付けばまた綱渡りの毎日となっている。これも暫くは続きそうだ。

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                   <中門を望む>
南部の家の続きを。
遠隔地であること、冬季の積雪などもあり、車に載ったまま表門を潜ることを前提としている。中は御影石のピンコロを敷詰め、融雪対応のため、散水設備を仕込んでいる。流れる水は中門前の水路に集水されるが、通常は池のオーバーフローがこの水路を満たしている。
車を降りると、この中門が迎える。
主人はこの水路を挟んで客を迎え、ここで主客が顔を合わせて、家の中に迎え入れられる。中門を開けると、敷地の最も奥行きある部分が望め、池に望む滝が遠景のアイストップとなる。東西に長い敷地を生かして建物を雁行させ、各所に庭との繋がりを持たせている。
池上には広々と濡縁を張り出し、庭と室内の融合も図った。

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               <雁行する建物を庭が包む>
庭石も樹木も、主人自らが近郊から探してきたもので、特段の銘木はないものの、木の特長を殺さぬように互いの樹木を組んでいくことで、この庭は造られている。
これは庭石も同様で、各所の主張を抑え、静かな取り合わせの中から、にじむ雰囲気が立ち上るようにと作ってきた。

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                <滝口と、そこからの流れ>
茶利石を畳んだ延段を歩いて玄関へと向かう。
この玄関はもっぱら客用の玄関で、日常使いの内玄関は、駐車場から雨掛かりなく家の中へと入ることができる。
屋根は銅板として、入口前は屋根を葺き下ろし、軒先を近くすることでより穏やかな佇まいをねらった。寒冷地ではあるが、玄関戸をサッシにしては折角の試みも台無しになるとあって、木の格子戸を誂えた。
柱は北山の磨き丸太、外部の軒裏はサワラのノネ、破風は地元の赤松を用いている。
  (前田)

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                    <玄関を見る>