南部の家<竣工>

7月中旬から書き始めた実施設計も終え、25日の講演準備や月末締め切りの出品取り纏めにあたふたとしている。お盆も仕事ばかりで、今夏もこれで終わるのだろう。
ふと昨年の夏も、三春の禅寺の実施に追われていたのを思い出した。
9月からは、今日決まった博多の仕事に精力を注ごう。

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             <南部の家 道路から全体を見る>
本欄でも紹介していた南部の家が竣工した。
5月に全て引き渡したものの、写真整理が出来ずに間延びしてしまった。すでに施主はお住まいになられ、快適に過ごしているらしい。7月のはじめに東京で会った折り、喜んでいる表情を拝してホッとした。
話を聞いて取り掛かったのが、今から5年前。土地の取得から始めたこともあり、思えば随分と時間が掛かった。東西に長い土地と、周辺に隣家が密接していないこともあって、伸び伸びと計画が出来た。
池と流れが欲しいということから計画が始まり、庭園と一体になった住まいを望まれていた。

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                <敷地南西から見る>
土地が400坪少々、東西に長く南に道路が取り付く。幹線道路から離れているため、車の音に悩むことはない。南の先には小高い丘陵が連なっていて、これを借景に取り込みながら、ゆったりした時間の流れが家全体を包むような空間にしたいと、土地を見て思った。
数寄屋の醸す品の良さと、いつも手がける住宅で見せる骨太の木組みを混ぜ合わせ、美しさと力強さが噛み合うような建築を志したい。
話を聞いて書いたプランが気に入られ、それでも実施設計に入るまでには1年の時間が掛かったが、その間に良い意味で意志の疎通が出来た。大きな建築にもかかわらず、竣工まで手直しひとつなく引き渡せたのは幸いだった。

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                  <表門を見る>
全体を平屋建てとして周囲に塀を巡らし、表門を開ける。
東北の地ということもあり、冬の厳しさに耐えねばならないとあって、些か無骨な門としたが、屋根は大きく起りをつけた一文字葺きの瓦屋根として、その中にも穏やかな佇まいをねらった。
門の鏡板は天然杉の300年もので、一枚の板幅が4.2尺という材料が手に入った。こうした出会いも建築には欠かせないもので、図面では2枚割りにしていたが、やはり1枚の鏡戸は見事である。
これから、何回かに分けて紹介したい。
  (前田)