三重県 伊勢市
市営駐車場からおはらい町に向かう際、必ず通るのがこの地下道である。志摩へ抜ける県道が上を通っており、多くの参拝客がここを通って内宮へと向かうこととなる。
HPで紹介した「新五十鈴茶屋」が完成した直後にこの話があった。伊勢文化会議所が所管しており、どのように整えようかと相談があった。実は前々回の遷宮の折り、高松在住の画家である門脇俊一画伯が、現代版の参宮名所図絵を制作された。神宮への寄付を願っていたが、諸問題もあってそれが叶わず、伊勢文化会議所が預かることとなった。その屏風絵をここで展示出来ないかと、会議所から提案があった。6曲屏風が24隻あり、繋げると80mを超える大作であった。
会議所は当初、写真製版でパネル化して展示しようと思ったようだが、屏風絵は、屏風に仕立てる前提で描かれていることもあって、出来れば屏風のままで展示出来ないかと提案した。
かなり議論を重ねたが、屏風そのものを展示することは出来ない。その中から陶版という話が出て、信楽の大塚オーミ陶業に相談したところ、快く引き受けてくれた。
実物を正確に写真に撮り、セラミックに焼き付けるのだが、周囲の木枠の表情までもが忠実に再現され、また和紙の持つ暖かみまでもが表現されたのには驚いた。
また上屋を含めて、伊勢の景観に寄与させねばならないと交渉を重ね、木造で建てることの許可も得た。その意味では、他にはない地下道が出来たのではと思っている。
心配されたいたずらもなく、来る人はまさにタイムトンネルを潜っておはらい町へと入っていく。参宮者へのもてなしのひとつになった。