岩手県 盛岡市
盛岡市街から車で10分ほどの場所に建つ。周囲は閑静な住宅地で、近年分譲された街区の一画にある。ご夫妻ともに木の家が希望で、これまで各地の建築を尋ね、主旨に叶う工務店探しをしてきたと聞いた。
そのようなおり、八戸市内で建てた私の家をご覧になり、このたびの依頼へ繋がった。
敷地の西側には大きな崖が迫っているのが難点だったが、南側には自生の林が広がり、澄んだ空気に満ちあふれていた。そのため西側を塞ぎ、南側を大いに開放することで、各部屋にこの雄大な自然をそのまま充満させたいと思った。
玄関を入ると土間づたいに応接空間へと繋がり、そのまま南庭へと続く。玄関とは格子戸で柔らかく遮り、南庭側には全開放サッシを入れて、庭とダイナミックに接続する。
玄関には下足室を設け、夫婦2人と子供たち5人分を収納する。
土間の応接室と繋がるように大きなリビングを設けた。南側は2階まで吹抜き、大きなガラスを入れ、前面の林全てを空間に受け入れたい。屋根を構成する架構を現し、欅の大黒柱が棟を支える。リビングを中心として各室が繋がり、どこにいても家族の気配が感じられる。
ダイニングキッチンもリビングと繋がるが、天井高を抑えて独自性を出した。ダイニングは南に張り出す格好で空間を囲い、矩の手のガラスを通してみると林の表情も異なり、どこからもこの借景を楽しませてくれる。
柱は杉の柾目づかいを原則として配り、小屋の丸太は赤松を八角に落として用いている。松の油分は時を経ると、一層光沢を持って見るものを楽しませる。
真冬の雪景色は一段と綺麗で、幻想的な風景に暫し時を忘れて見入った。